終末期・緩和ケアを専門とする作業療法士のブログ~死について、もっと前へ…~

終末期・緩和ケア分野で働いている作業療法士の藤田と申します。日々の臨床で感じること、思ったこと今までの経験などを書き記していきたいと思います。終末期リハビリはまだまだ始まったばかりの分野です、意見交換できれば幸いです。

ターミナルサポートケアでできること。

こんにちは、終末期作業療法士の藤田です。

前回の記事で意志表明しました
自費リハビリの名称は(とりあえず)

『ターミナルサポートケア』という名称にしました。

これからしばらく当ブログでは、私の経験談をもとに
終末期リハビリテーション、ターミナルサポートケアでどんなことができるのか、できたのかをお伝えしたいと思います。

どちらかというと受ける側…患者様向けの記事になると思います。


ターミナルサポートケアで出来ること。

1.歩いて新幹線を見に行きたい

末期癌のAさんは病棟のベッドで特に何をするでもなく寝ている時間ばかりを過ごしていました。

もともと旅行が大好きで、毎年電車に乗り東北へ、もうそれができない事もご自身でわかっていました。

そんなAさんに歩く練習を目的にリハビリが処方されます。

目的を見出せない中でのスタート、当然「もうすぐ死んじゃうんだし、なんもやんなくていいよ」と。

マッサージをしながら話をしていくうちに「今度東北に新しい電車が走るんだよね」と話されました。

東北新幹線開通直後の話です。


「では、新幹線見に行きましょうか、はじめは車椅子から。」

車椅子に乗って病院の屋上へ、目的の東北新幹線は見えませんでしたが「久々に電車を見れた」と笑顔でした。

数日後、Aさんは言いました「歩いて見に行きたい」

新幹線を見に行くリハビリがスタートしました。

歩くことには相当のエネルギーを使います。寝ていた方が、車椅子に乗っていた方がよっぽど楽ではあります。

それでもAさんは自身の命を燃やしながら、新幹線の見える場所へ。

当時まだ本数が少なかったせいか、なかなか見ることはできませんでしたが

Aさんは時刻表を調べ、目撃証言を集めるなどして、苦労の末(リハビリの時間調整も大変でした…)東北新幹線も見ることができました。

Aさんは泣いていました。

病状は進みます。

「次は写真を撮るんだ」とカメラを購入した頃には歩くことはできませんでした。

Aさんは私にカメラを手渡し「代わりに写真撮ってくれよ」と話されました。

私が撮った写真はお世辞にも上手くはなく、「何やってんだよ〜」と笑われました。

そのやり取りの翌週、Aさんは亡くなられました。

最後に交わした言葉は「なんかちょっと調子悪いんだよね、『また明日』」でした。

亡くなられた日、いつもの場所に向かうと、ちょうどそのタイミングで東北新幹線が走っていくのが見えました。

もしかすると早速東北旅行に行ったのかもしれませんね。

ターミナルサポートケアでは病気を治すことはできません。

しかし「寝てばかりじゃなくて、起きて新幹線を見に行きたい」をお手伝いする事もできるかもしれません。

ご興味のある方は是非ご連絡ください

藤田