終末期におけるリハビリテーション④~生活範囲の拡大~
こんにちは、終末期・緩和ケア作業療法士の藤田です。
おそくなりましたが新年あけましておめでとうございます。
年末年始、私自身も非常に忙しいかったです。患者様はもっと忙しく、人生をかけて生活をされています。
医療職として無闇に「がんばります」とは言いませんが、自分と向き合いながらやっていきたいと思います。
終末期におけるリハビリテーション、今回は
生活範囲の拡大
について。
とはいえ過去の3記事で終末期・緩和リハの根幹はほぼ書いてしまっているので重複する箇所が多いと思いますが、よろしくお願いします。
過去記事はコチラから↓
kanwakea-fujita.hatenablog.com
kanwakea-fujita.hatenablog.com
kanwakea-fujita.hatenablog.com
ベッドから部屋の外へ
生活範囲の拡大というのは簡単に言うと「行動の場所が広がる」ということです。
緩和ケア病棟に限らず、患者様が外の世界を感じる機会はどれくらいあるでしょうか?病院に入院するということは自宅にいた時に比べて確実に寝ている時間が増えます。
リハビリの役割はベッドから部屋の外へ、部屋の外からリハビリ室へ、そして外出・外泊へとつなげることも含まれます。
離床との違い
「離床」自体は本来の意味としては同義になりますが、医療業界では「離床させる」と表現されるように、医療者から患者様への行為というイメージが強いです。
生活範囲の拡大とは、患者様の選択のもとに行われることであり、患者様の主体が入ります、「活動」に近い部分があります。(言葉として適切かどうかは不明です。良い案がありましたら是非教えてください)
生活範囲の拡大を進める際の落とし穴
上記同様「ご本人の選択がないものは拡大とは言えません」何も言わずにとりあえず車いすに乗せるのではなく「何故提案したのか?」「どういった効果があるのか?」そして「拒否ができることの保証」をきちんと提示する必要があります。そして患者様の恐怖や抵抗を肯定し「どれだけ楽に活動するか」を意識する必要があります。
とりあえず載せて喜ぶのは患者様ではなくて人をコントロールできたことがうれしい医療者です。(勿論載せることができてうれしいですと共有することも一つのコミュニケーション方法ではありますが、Thの感情を患者様に転移させないように注意が必要です。)
何故提案したのか、効果も含め伝える
理由は様々ですが共通することは必ず「患者様の立場を踏まえた上での提案」であることです。
例としては
・リハビリをする場所を紹介したい→相互理解、関係性の構築
・ご自身の状況を知る為のバロメーターになります。→自己分析の促し
・どれくらい座っていられるか確認しましょう→身体機能の再認識
・外の風に当たることで痛みがまぎれるかもしれません→疼痛コントロール(ゲートコントロールに近い)
等々・・・あくまでテンプレートな提案ではなく、初回評価、面接で得た患者様の様子やHOPE、キャラクターなどから判断し、声掛けを行っていく必要があります。
拒否ができることを保証する
同時に拒否ができることを保証することも重要になります。
特に初めての場合、どういったことから患者様が抵抗を感じるのかわかりません、そして関係性の構築がなされていないとなると「本当は嫌だけどいわれるがままに、目的もなく離床した」事になります。
くどいようですがそれで喜ぶのは医療者だけです。
具体的に「離床に抵抗感を示される理由」をいくつか伝えることで、患者様が「断り易い」環境をつくることの一助になります
例
・ 外に出るということは当然個室より人が多いので「他人の眼に抵抗を感じる人がいる」
・ 歩行器を使うことについて「道具を使ってしまった自分に抵抗を示される方もいる」
・ 転ぶんじゃないか痛みが強まるんじゃないかと「恐怖を感じる方もいる」
等々・・・
患者様は多くの人に「頑張れ」「外に出たほうがいい」と言われております。
それが大切なことだというのはご本人が一番分かっている事です。
それでも抵抗を示されるということは上記等、何かしらの理由があり、できないこと、理解されないことが負担になっている方も少なくありません。
その感情を否定するのではなく、肯定しその上でどうしていくかを一緒に考えることが、生活範囲の拡大につながります。
どれだけ楽をして部屋から出るかを意識する。
生活範囲の拡大を行うことでまず心がけるべきは「如何に楽して部屋から出るか」が重要になります。
道具で言えばチルトリクライニング車椅子のように「ベッドとほぼ同じ角度にできる」車いすであったり、いきなり杖ではなくてサークル歩行器を使う。
部屋の外の廊下の至るところにいすを置き、オーバーなくらい休憩時間を作る。
歩く時間よりも座る時間、会話作業の時間を多くする。等があります。
「思っていたより簡単だった。」という言葉をいただければある意味成功と捉えても良いのかもしれません。
逆に「初めてなので緊張するから恐らく大変だと思います」と事前に患者様に声をかけるのも良いと思います。
そうすることで精神的余裕が生まれ「意外とできた」と感じていただくことも増えます。
終末期リハビリテーションで重要な事柄として「即効性」というものがありますが、生活範囲の拡大のための介入は即効性に結びつきやすい印象があるため、上記方法などを使用しながら優先的に行っています。
まとめ
今回は生活範囲の拡大について記事にしました。
-
ベッドから部屋の外へ、そして外出・外泊へとつなげる。
-
患者様の選択のもとに行われることであり、患者様の主体で行われる。
-
とりあえず載せて喜ばせるのではなく、患者様の立場を踏まえる。
-
現状に対する恐怖について肯定し拒否する選択も保証する
-
頑張るのではなく、どれだけ楽に問題点をクリアするかを意識する
生活範囲を拡大することはそれはそのまま生活意欲の向上につながります。
向上することで、残りの時間に自分はどうあるべきか?
と考える余裕が生まれることがあり、それはHOPEとして表出されたり、患者様自身の行動となって現れます。
HOPEが生まれれば、リハビリも進めやすくなりますし、プログラムも立てやすくなると思います。
次回はそのあたりについて記事にしたいと思います。
終末期リハビリテーション講習会情報はこちら↓
kanwakea-fujita.hatenablog.com